特色ある診療体制

活動報告

チーム員日記は認知症初期集中支援チーム員の体験に基づいた創作(フィクション)です。
毎月1日に、全13回シリーズでお送りする第12回です。
第11回の記事はこちらから

 

チーム員の今までの経験で、認知症の方は、サービス導入の了承を得ていても、サービス利用直前に断ることがあることを知っていました。サービスを断る理由は様々です。家族に説得され、了承したものの納得していなかった場合や、サービスについて了承したことを全く覚えていない場合です。サービスを受け入れようと思った時は、何かしら生活で困っていたけれど、サービス開始する時は困っておらず「何とか出来ているので必要ない」と、言い始めます。認知症の方は、困っている時にすぐに支援に入らないと困った時の事を忘れるので、サービス導入の初日は工夫が必要です。

チーム員は、デイサービス利用の初日に、万次郎さんが「デイサービスに行かない」と言い始めた時の対応を考えるために、サービス利用の前日に万次郎さんに会いに行きました。

万次郎さんは、チーム員に会うと「リハビリの迎えが来るのは、明日ですよね?」と、聞いてきました。万次郎さんは、忘れないようにカレンダーにマルをつけ『リハビリ』と書いていました。チーム員は、万次郎さんが、デイサービスに行く気持ちが変わっていない事を知り、デイサービスが更に充実したものになるよう声掛けをすることにしました。

「明日、リハビリの休憩時間に、万次郎さんが旅先で撮った写真を見せてあげたら、皆が喜ぶと思うんですよね。私は、その写真を見ながら万次郎さんが教えてくれたので、旅行に行った気分になれてとても楽しかったです。その写真を一緒に選びましょう」
万次郎さんはチーム員と一緒に写真を選びながら、楽しかった旅行の話をしてくれました。

デイサービス利用初日、万次郎さんは迎えの車が来ると「おはようございます」とあいさつをして、職員に勧められた席に座りました。

デイサービスは、体の不自由な方がトイレ介助や入浴の手伝いをしてもらう場所です。同時に、趣味やおしゃべりを楽しむ場でもあります。万次郎さんは、同年代の方とリハビリ(体操)したり、食事をしたりと初めての体験をしました。そして、休憩時間には持ってきた写真を見ながら旅の話をし、楽しい時間を過ごすことが出来ました。デイサービスの職員が、初めて参加する万次郎さんと話の合いそうな方を同席させた仕掛けは、うまく功を奏したようでした。

夕方、万次郎さんは、帰り支度をしながらデイサービスの職員に「また、迎えに来てください」と、頼んでいました。

 

万次郎さんは、デイサービスに行っても良いと思っていたので、少しでも早くデイサービスに馴染めるよう工夫しました。万次郎さんは新しい世界(デイサービス)に一歩踏み出しました。

 

次回は、チーム員が考える万次郎さんについて伝えていきます。

 

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