特色ある診療体制

活動報告

「第2回児童思春期支援オンライン研修会」のご報告(2023年1月20日)

日頃は三原病院のホームページをご利用いただき、誠にありがとうございます。

当院で開催しました「児童思春期支援オンライン研修会」の内容をご報告いたします。皆さまのご参考になりましたら幸いです。

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 2023年1月20日(金)19:00-21:00に地域拠点活動の一環として研修会を開催しました。若者活動サポートスペース ちゃんくす 代表で、作業療法士である西上忠臣 先生を講師にお招きし『思春期の発達障害の方々を地域で支援する現場から』というテーマでご講演いただきました。私は、司会進行の立場で参加しました。ご講演の後には支援者間の関係づくりも目的に西上先生も交えた約40分にわたる質疑応答を行いました。打ち解けた雰囲気で内容的にも有意義でしたが、今回の感想では割愛します。

 西上先生は、ちゃんくすの活動を通して、主に発達障害のある方で、かつ、小学校高学年から20代前半ぐらいまでの当事者と、その家族の支援に取り組んでおられます。ちゃんくすの活動の3本の柱として①当事者の作業に焦点をあてた活動、②当事者の力を地域の中で発揮できるようにする活動、③地域の中で当事者の役割を分担できる活動があります。これら3本の柱からわかるように当事者と家族だけでなく地域も見据えて活動を展開されています。ご講演では、この3本の柱にそった様々な実践が紹介されました。

 3本の柱の①については、日本作業療法士協会のホームページによると『作業とは、対象となる人々にとって目的や価値を持つ生活行為を指す』とあり、作業療法士は、作業に焦点を当てて対象となる人々が目的や価値を実現するのを支援する専門職であると理解できます。作業療法士である西上先生も、こうしたお考えであると理解しました。②については、人を環境と切り離して考えることはできず、当事者や家族が地域に受け容れられ、地域の中で主体的に活動し、自己を発揮できる場が生み出されることが必要です。③については、当事者、家族を含めた地域を構成する人達が、それぞれの資質、素質に応じた役割を担い、協力しあい、貢献しあうことと理解しました。西上先生は、地域と、当事者、家族のニードを把握して結びつける活動を行っています。当事者や家族を含めた地域の皆が生き生きと輝ける多様性のある社会になれば、本当に良いと思います。

 スライドにあった図が印象的で、多職種や家族が当事者を支援しながら当事者の変化を求めるあり方を『タコつぼ方式』として紹介がなされました。よく使用される図なのですが、西上先生のご説明を聴きながら、多職種や家族が当事者を取り囲むように描かれた図を見ていると、見ようによっては当事者の個性や資質を蔑ろにして社会に合わせるように迫っているようにも見えました。もう1つの図は、共有できる目標に向けて当事者、家族、多職種が同じ方向に向かっている図であり『目標を達成するためには本人も資源のひとつ』という言葉が添えられており、圧力を感じない開放的な図でした。

 例えば、自閉スペクトラム症の特徴でもある拘り、すなわち限定された強い興味・関心が家庭内で問題になっていたのが、その強い興味・関心が地域で生かされることによって地域の活性化にも結びついた例が示されました。それまで問題視されていた行動がリフレームされて意味づけが変わり、当事者と家族の関係が変化する、地域との関係も変化するということが生じ、こうした関係性の変化を通して当事者も成長するということが、見事に表現されていました。非常に大らかでダイナミックな支援の在り方であり、精神科医療の現場で働く私達は、知らない間に精神科医療の思考の枠組みに嵌まり込んでいて、こうした発想ができなくなっているのではないかと反省しました。

 本来は、切り離すことのできない当事者と家族、地域との関係を切り離して、当事者だけに変化を求めるのは、精神科医療の現場でも生じやすいものです。支援者である私達も当事者や家族にとっては環境であり、私達自身もパターン化した思考の枠組みから抜け出して変化しないと、逆に患者様や家族の肯定的な変化を妨げてしまう可能性があります。

 西上先生が展開する支援は、非常に大らかでダイナミックである一方で、作業検査や尺度を用いて当事者や家族の状態を把握していたり、自らの実践を支持する先行研究も示されていました。企業との繋がりや他施設、地域で活動する人達との繋がりも構築しておられます。西上先生は、人と人との繋がりの大切さを強調しておられました。当事者や家族の支援の場を守るために、ちゃんくすを経済的に維持することにも力を注いでおられるでしょう。

 講演全体を通して、当事者や家族の支援に対する西上先生の思いが感じられました。目指すもの、理念をしっかり見据えているからこそ、エネルギーを注ぐのに無駄がなく、柔軟に動いても崩壊しません。もちろん医療機関には医療機関の役割がありますが、地域医療が求められている現在において、西上先生の実践は、私達が見習うべき様々なヒントがありました。

 最後になりましたが、準備段階からご協力していただいた皆様、当日参加していただいた皆様、何よりも講師の西上先生に感謝いたします。

[文責]  心理療法室 竹田博樹(児童思春期グループ担当)

 

●第1回児童思春期支援オンライン研修会 『「児童虐待」とどう関わっていくか考える』のご報告こちら

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