特色ある診療体制

活動報告

チーム員日記は認知症初期集中支援チーム員の体験に基づいた創作(フィクション)です。
毎月1日に、全13回シリーズでお送りする第5回です。
第4回の記事はこちらから

 

息子の隼人さんは、県外に住んでいました。結婚後、その地で永住するつもりで家を建てました。会社では重要なポジションを任され、介護のために頻繁に帰ってくることは出来ませんでした。

近所の北村さんは「お父さんの様子がおかしいぞ」と、隼人さんに電話をしました。隼人さんも何となく、認知症かもしれないと感じていましたが、『気のせい』と思うようにしていました。しかし、どうにかしなければならない時期が来たと覚悟を決めざるを得ませんでした。

「今は仕事が忙しくて帰ることが出来ない。ひと段落したら必ず帰るので、それまで何とか見守ってほしい」と、北村さんに頼みました。

北村さんとの電話を切った後に、隼人さんは正月に帰省した時の事を考えていました。冷蔵庫には、たくさんのお惣菜があり、食べきれない量で「こんなに食べきれないよ。賞味期限が切れちゃうよ」と話すと、万次郎さんは「足りないよりはいいだろう」と答えていたことを思い出しました。『足りないよりはいいだろう』のレベルを超えた量の物が冷蔵庫の中にあった。それに捜し物ばかりしていたな…。ご飯を食べているのか?お風呂に入っているのか?夜は眠れているのか?と気になりはじめました。少しでも早く帰省し、事実を確かめるため、会社に休暇願を申し出ました。

他人に迷惑をかけないようにしなければならない。今の生活をいつまで続ける事が出来るのだろう?認知症が進行しているなら、自分たちと暮らさないといけないのか…。施設入所を考えないといけないのか…?と、考え始めていました。

 

息子の隼人さんは、父親(万次郎さん)の老いを感じていました。物忘れをしていることに気付いていましたが、自分の父親が認知症であることを認めたくありませんでした。

次回は、今の生活を何とかするために専門家に相談することになった経緯をお伝えします。

 

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